読書感想文

さいきん、病棟の本棚に置いてあった、「いのちある限り」(講談社、 ISBN:4061834258)という本を読んだ。そして、やや複雑な感想を持った。
内容は、ある交通事故で、ほぼ「即死」が当たり前、という脳外傷の救急患者を、何週間にもわたって必死で救命する脳神経外科医の手記である。
やや違和感を覚えたのは、患者が意識を取り戻したところで、その医師はとてつもない達成感、を感じているところかな。
その患者には高次脳、そんなもんじゃない、もっと低次の後遺症が残る事が確実であるのに。
ただ、この医師は、この患者が福祉施設に移るところまできちんとアフターケア、初期リハビリに心血を注いでいた。その医師すばらしい仕事をした、と思う。

精密な脳手術をして、さらに秒単位で状態の変わる急性期の救命に当たる、というのは脳神経外科医師にしかできないすばらしい仕事であるし、それは脳神経外科医としてのテーゼでもある。
ただ、もうちょっと期待したいことは、急性期を何とか救った、というところで完成!ではなく、この物語の医師のように、ぜひ次の医療や福祉につなげていくことを考えてほしい、ということである。
医師が望もうと望まざると、命を救ってもらった患者はそこから新しい、長い人生の道程をたどることになるのだ。そのはじめの数里をともに歩いてあげることは、とても大切なことなのではないかな?と思うのでした。

私が脳に障害を持たなければ、もっと素直に感動することができたと思うのです。しかし。障害を持ってから、ちょっとひねくれた見方をしてしまう私でした。
私が脳挫傷くも膜下出血となって、脳神経外科医の元にいた期間は、わずか5日です。