本と、両親の後ろ姿

私の両親は本が大好きだ。子供の頃、家には原文のままの古典や、綺麗な装丁の初版本などがたくさんあったのを思い出す。また、私の家庭は経済的にけっこう大変だったのだが、父は毎週末になると図書館に行って、借りられるだけの本を借りてきて、毎晩遅くまで読んでいた。小説や文学だけでなく、科学の本も好きだったようで、宇宙論相対性理論などの本を読んでいたこともあった。外に遊びに連れ出してくれるときは、いつもポケットに文庫本が入っていたのが印象深い。少しベンチに座ったその一瞬ですら惜しいように本を開いていたなぁ・・・
そのときは、私は将来そういった科学、物理を専攻するとは思っていなかったけれど、科学ものは興味深くて、なかなか理解できないながらも読んだりしていた。
たぶん父の影響が一番大きくて私も本を読むようになったのだろう。そういえば父が言っていた、海外の文学で一番気に入った小説はプーシキンの??が気になって眠れない。
ちなみに母のお気に入りは赤毛のアンシリーズ、アガサ・クリスティドストエフスキーヘルマン・ヘッセとごちゃ混ぜ。というか私が買ってきた本を片っ端から読んでいた。この前うちにきたときも、本を物色して持って帰ったし・・
ふたりとも学歴はないが、機会があればきちんと勉強したかった、と言っている。いい本との出会いは、その人の精神世界さえ変えてしまうほど大きな出来事だ。もっとたくさん本を読みたいなぁ、と思いますが、一生で読める本は限られている。それが残念だ。
家は貧しかったけれども、3人の男兄弟が、一人も間違った道に逸れることなく大人になったのだから、大したものだと両親を尊敬している。いや、ほんと洒落にならないくらい貧しかったからね。長生きしてもらいたいと思っている。私が一番ダメな気がしてくる。そんな父の印象的な台詞。会社の健康保険の更新関係で私に質問したこと。
  「なぁ、おまえどこの大学通ってるんだっけ?」
私も、その場にいた母もあっけにとられて、3秒後に爆笑した。

父が持っていた古典文学は結局読まなかった。というか、読めなかった。古典苦手だったから。そのかわり子供には如何かと思うが、三島由紀夫全集なんかを読んだなぁ。小学生の時に・・旧仮名使いで読みづらかったけど、おもしろかった。一番のお気に入りは「春の雪」から始まる「豊饒の海」4部作。

ちなみに、両親共に音楽はほとんど聴かないが、兄弟の中で私だけなぜか音楽マニア。何がきっかけだったのかなぁ?