階段から落ちた

2階から滑り落ちた。幸い骨は平気そう。頭を階段の段にがんがんぶつけたぁ・・


いたい。駆け寄ってくる足音。


「大丈夫・・な訳ないよね・・・」
「とりあえず、イソジンとセッシ、あと脱脂綿。ちょい、ここ消毒してくれない?あ、セッシ、無水エタノールで消毒してから。」
「ん、これってしみるやつ?」
「いや、イソジンはたいしたこと無いから、とりあえず消毒・・いてえ!ちょっとは遠慮しろ・・」
「じゃ、次はモノクリルで縫合するから・・丸針はどこ?」
「出来るわけねーじゃん!針もモノクリルもおいてあるはずないし。」
「じゃあ、適当にソフラチュール、あとゲンタシンある?傷は残るからね。」
「薬箱にある。って、ソフラチュール?ゲンタシン?あなた、誰?」
・・・・・・・・・・・・・・
「滅菌ガーゼと包帯は、そっちのバイク用救急箱にあるから・・」
「じゃあこのストッキネットでとめておくから。」
「・・・・さんきゅ」


なんか、足の傷の手当てが終わって、包帯だらけ。
関節が痛いので、ボルタレンを50m飲む。はぁ。


「頭はだいぶ切ってるようね、マスキン水で洗って、あと周囲の髪を剃ります」
「ディスポのメスなら救急ボックスにあるから、それで・・」
「それでいい、貸して」
「つーかさ、、だったら頭を先に処置しない?」
「Shut up!剃るからね。じょりじょり。」


なんか、はげみたいでいやだなぁ・・



「あとはシリンジと針、縫うから周りをキシロカインでロカね。」

「う・・ん、でも、針も糸もないからさ、SSテープならあるからそれで留めたら?」
「縫い針と絹糸でいい。こういうところはきれいに処置しないと傷が残るの。」
「ナイロンと、絹糸がそっちの針箱にある、針は縫い針をまげて角針にして・・」
「わかってるから!あと糸はナイロンがあるならそっち使うね。」


針をライターであぶって曲げる。エタノールで消毒。そうしている間にキシロカインをぷすぷす刺される。感覚がなくなるが、縫われる感覚はわかる。


「なんか、ぶつけたところに変な痛みが・・・ちょ、目がかすむ・・」
目の前にLEDの強烈なライトを照らされるのがわかるが、だんだん水に沈むようにわからなくなる・・
「これ、硬膜外・・・・」音が聞こえなくなる・・


めがさめる。絨毯に血が少しこぼれている。
頭を刺されていた。精密ドライバーを握る手が血に濡れて震えている。


「・・・それ・・・どうして・・・」
「血腫を除去したの、必死だった。うまく穿孔ができた・・奇跡みたい」
「・・・・・・・・・・・危険だったの?」
「とにかく119番しないと。」
「いまさらかよ!!! ありえねー!!!!」
「じゃあ呼ばない。」
がちゃん。


「GOD DAMN!!!!」


「とにかく傷の処置をしておいてよ。」
「今やってる、生食無いの?」
「ソリタT3の輸液なら、冷蔵庫にあるけど・・」
ばしゃばしゃ。
またイソジンのにおいがする。針で縫われる感覚がする。
「ガーゼ、あとスキントンテープ!」
「それも、救急箱にあるよ・・・」


頭のはげはおおきくなったようだ。ガーゼを厚く当てて、包帯だらけ。ミイラだ。


「助けて、くれたんだ・・・」
「勝手にあんな事したの絶対黙っててね。医師法違反だから。私は准看・・」
「緊急避難、自分または他人の生命〜〜で行った行為の違法性は阻却される。大丈夫。で、救急車呼んでいい?」
「私が出てから、3分したら呼んで。」
「・・・・患者が優先じゃないのかよ」


ハルシオンは、飲んだら歩いちゃダメよ、ほんとに・・。」
「はぁ、おっしゃるとおりです、ごめん、助けてもらったな。」
「では、お大事に。ソフラとガーゼは毎日換えること。」
「はい。っていうか、CT取ったりしなきゃダメだから入院でしょ?硬膜外血腫って。」
「じゃあ、3分だからね。今お湯入れたカップラーメンができたら食べながら電話したらいいでしょ!じゃあまた!」
「ちょ、逆ギレ?セルシン一筒静注して座って・・」
「馬鹿!アホ!DQN!」
・・・・ばたん!
ぎい〜〜〜
「見舞いくらいは行ってやるよ。まぁまぁ、Ease your mind!」
ばたん。本当に出て行きやがったよ。


レキソタンを1錠、あと痛くてたまらないのでボルタレン座薬50をひとつ。それでも耐えられないので冷蔵庫からソセボンのアンプルを出す。翼状針を手の甲に刺して、乳酸リンゲルに混ぜて投与。
救急車を呼ぼうと、電話機に手を伸ばす。市大センター病院に電話して脳外科の急患でかかることを伝える。そしてカップラーメンを食べてみる。ふう。
鏡を見る。包帯から少しはみ出たドレーンから、少し血が滲んでいる。先の曲がった精密ドライバーが血にまみれて転がっている。なんとも良くできた処置をするじゃないか。
はじめはどうかと思ったけど、三次救急でもやっていけるんじゃないの?って。


こつん、・・痛い!


やっぱり小指おれてるじゃん・・・あ〜あ。えーと割り箸と包帯・・・
やっぱりどこか抜けてるんだよなぁ。まぁいいか。
遠くからサイレンが近づく。添え木を当てた手で床に散乱した注射器、メス、輸液のパック、縫い針などを集める。


またストレッチャーかぁ。