白いコーヒーカップ その5

そんなことをしながら、いつもの池袋の街に来た。目的地は、シネマ・サンシャイン。通称「シネシャン」だ。私服姿なので、とくべつ目立つこともない。雑然と下町を、雑多な人々が通り過ぎる。チラシを配る黒人、何をしているんだかわからない10〜20代の若者たち・・ここへ来ると私たちもその空気に溶け込んでゆく・・もう、学校に戻るつもりはさらさらなかった。恵も同じだ。
「これこれ、観たかったの」
と恵が指差したのは、「真実の行方」だった。
「ああ、これかぁ、おれも観たかったんだ」
「じゃ、これにしよ、券買ってくるからお金。」と恵。しっかりと学割で券を買ってくる。
「まだ時間あるけど、どうする?」と恵
「そうだな、下のゲーセン行かない、カーレースやろうぜ」
「オッケー、そうしよ」
私と恵はレースに夢中になる。どういうわけか、恵はレースゲームが上手だ。上手にシフトアップしながらコーナーをすごいスピードで抜けてゆく。私の画面から恵の車が見えなくなったところで、恵がゴールイン。
「めぐ、いつも速いな」
「だろ?車の免許取ったら、GT-Rでも買うか?」
「そんな金ないだろ」
何回かそのゲームに夢中になっていたが、いつも私の惨敗であった。そのうち時間がたって、
「めぐ、そろそろ行かないと並んでると思うよ」
「わかった。じゃ、行こう」