白いコーヒーカップ その14

翌日は朝から曇り空だった。鉛色の空の下を自転車で、学校へ。窓の外も鉛色に見えて、気持ちにも暗雲がさすようだった。退屈な授業を上の空で聞いていた。休み時間に、隣のクラスに行ってみると、恵がいない。じゃあ、あそこかな、と進路指導室に行くと恵が眠っていた。この部屋はめったに使われることがないので、サボる生徒の溜まり場になっている。私もしばらく呆然として壁に並んだ赤本、青本を眺めていたが飽きてきたので恵を揺り起こした。「なんだよ、、、起こすなよ」はじめはそういっていたが私の顔を見るなり「おういんなみ、お前もサボリか。」といきなり辛らつな言葉を浴びせてくる。
「違うよ、めぐを探してたんだよ」と私が言うと
「ふーん、なんで?」と聞き返す。
「いや、この前後楽園に行ったろ、今度はおれの方から誘っていいかな、と思って」
「ははーん、おまえ、私に惚れただろ」
あまりにもはっきりというのでやりづらい。
「いや、さ、楽しかったからお礼。おごるよ。」
「おごりかぁ!じゃ、いこうぜ、ちょうどお昼時だしさ」
「いや、どっちかと言うと、夕方に誘いたいんだ」と私が言うと
「おいおい、誰に教わったんだよ、そんなのよ」と返してくる恵。
「いや、ランチより、ディナーの方がいいらしいって書いてあったから・・あと少し飲めるでしょ」
「なんだよ、酔わせてどうしようって言うんだよ」
「なにもしねーって」
「わかった。今日の放課後、適当に時間つぶしてそれからいこうぜ」と恵はつづける。
「ついでに、お昼だから中大行かない?」
「いいよ、チャリだけど、乗ってくだろ?」
「おう、たのむぜ」
恵と私は自転車で中央大学の学食に行く。それぞれおいしそうなものをとって、席についた。周りには、大学生たちがあふれている。それぞれ食事を終えると、混雑した学食から中庭に出て、しゃべる。授業のこと、学校のこと・・・
「だってさ、あの英語教師、間違い教えようとするんだぜ、おれが訂正したらすごい顔でにらまれてよ」私は言う。
「あいつはサラリーマン教師だからな。何もないのが一番なんだよ」恵も同じ評価のようだ。「あいつの授業なんて、きいてたら頭悪くなるよ。一応2/3は出てるけどな」
やれやれ。高校の教師もピンきりだ、ため息をついていた。中には本当に頭がよくて、きちんと教えようとする先生もいたが、こういう質の悪い教師もいた。
「一応進学校なんだけどな」と頷きあって、高校に戻る。