白いコーヒーカップ その19

しばらく、目の前のサラダを食べていた。有線放送は、ピアノとベースが絡むジャズを奏でていた。
「・・・あんた、しっかりしてるよね・・うらやましいよ。」唐突に恵が言う。
「えっ?」
「いや、さ。わたしなんか惰性で生きてるような気がしてさ・・なんか目標とか、そういうのあるんだろ。」
「いや、まだしっかりした目標はないけれど、エンジニアになりたい、って思ってる。」私は答えた。
「私は・・何を目指してるんだろう?ってよく悩むのよね、もう高校2年だろ、そろそろ具体的な目標とか、将来像とかを持たなきゃいけないのかな、って。」
「いや、そんなこと考えてるやつ、まだまだ少ないだろ?」
「だって、来年は大学受験よ、そこで大方の方向性が決まっちゃうじゃない。」真剣なまなざしで恵は言う。
目の前の空になったサラダのお皿が下げられて、しばらくするとミネストローネが運ばれてきた。
私としては、恵のほうが将来のことをまじめに考えてると思った。そしていった。
「大丈夫。めぐの方がおれよりぜんぜんしっかり考えてるよ。おれはあくまでイメージしてるだけだから。」
「でも、理工学部受けるんでしょ?来年。」
「うん、そのつもり。」
「あ〜あ。私はどうしようかな〜、文学が好きだから、文学部にしようかな。でもあんたのほうがいっぱい本を読んでるのが癪にさわるけど。」
いつもの憎たらしい恵が戻ってきて私はほっとした。ミネストローネは熱々でトマトの香りがピンと立ち上りおいしかった。