白いコーヒーカップ その20

いつもの憎たらしい恵が戻ってきたところで、ワインの残りを二つのグラスに注いだ。ブルゴーニュグラスの半分くらいだった。
「やっと、いつものめぐになったね、いい顔してるよ。」私もほっとしてそう言った。
「バカ、恥ずかしいじゃない・・やっと私に惚れたか?」
「うん。」笑いながら私は返事をした。
「・・・笑いながら言わないでよ、もうほんとに人の気持ちがわからないんだから、バカ。」
「そういうなよ、こっちだって心臓バクバクなんだぜ、わざわざ酒を飲んだのは顔が赤くなるのをごまかすためと、勇気をもらうためだよ。」
私は、打ち明けた。
「そっか・・そこまで考えてくれてたんだ・・ありがと!」
「だから、恵のためにいっぱい考えたって言っただろ!じゃじゃーん、全部打ち明けちゃいました。」
「やっぱ、あんた、頭いいよなぁ〜、憎たらしいくらい。」
「・・めぐ、おれ、めぐが好きだよ。」
「ありがと・・・今度は私がなんか仕掛けを考えて答えを出すからね、期待しすぎないでまっててね。」「あんたほど頭よくないから。」
テーブルには、ラザニアが運ばれてきた。
「熱いうちに食べちゃお!」恵が声を張り上げて言う。
「そうだね、熱いうちに、は大切だよ。」、とつまらないインプリケーションをする私。「わかってるよ、そんなこと。私だってそんな馬鹿じゃないんだから。」恵がほっぺたを膨らませた。
「そのしぐさ、前からかわいいと思ってたんだ。」
「バカ、さっさと食べな。冷めちゃうぞ。」軽くインプリケーションを返してくる恵。うまいな、と私は思った。
「負けたよ。」私はそういって、二人とも、しばし無言で熱いラザニアを食べはじめた。