白いコーヒーカップ その22

注文を告げてしばらくすると、タルトと白いコーヒーカップが運ばれてきた。私は熱いコーヒーをブラックで、恵はミルクだけを入れて飲みながら、タルトを食べていた。
「めぐ、これ半分あげるよ。」私は自分のタルトを半分に切って、恵に言った。
「じゃ、遠慮なく。」恵は誰が見ても大きいほうの半分を自分のお皿に移した。
「あ、でかいのとったな、やっぱ。予想してたけど。」私は恵を睨むふりをして言った。「当たり前でしょ。」
タルトを食べ終わって、コーヒーだけになると、必然的にさっきの会話に気持ちが戻っていく。
「さっきの話だけどさ・・」二人同時に声に出して、見事にハモってしまった。
「めぐから、先にどうぞ。」と私が言うと
「何言ってるんだよ、男だろ、あんたが先に言いなさいよ。」
「・・・じゃあ、思い切って言うよ、さっきの答え、いつまでにくれる?」
「ふん、そう来たか。私も考えてたんだ。」
「あんま気を揉ませるなよー。」
「じゃあ、月曜日に答えるよ。凝った真似はできないかもしれないけどな。」
「週末に考えておいてくれるのか?」
「そういうこと。頭よくないから、時間ちょうだいね。」
「勉強しないでいつも上位のクセに何言ってるんだか。」
恵は試験勉強をあまりしているようではないのに、いつも上位者リストの常連だ。きっと才能があるんだろうな、と思っていた。ただ、数学は苦手なようだったが、国語と英語は上位10人にいつも入っていて、わたしも敵わないことがしばしばだった。
「じゃあ、月曜に。色よいお返事をお待ちします。」私が言うと恵は
「わかりました。しばしお待ちくださいね。」と答えた。二人同時に大笑いしてしまった。
「夏のバイトの話も、おいおい詳しくするね。」恵は水を一気に飲んで、
「そろそろ出ようか、あんた、酔っ払ってるし遠いから大変だろ。」と耳打ちした。
「そうだね、そろそろ出ようか、じゃあ・・」私はそういって上着を着て、伝票を取った。
「いくらかかったの、少し出すよ。」と恵。
「いいって、少しはかっこつけさせてくれよ。」
「じゃあ、ご馳走さん、サンキュ!」