白いコーヒーカップ その23

私は支払いを済ませて少し涼しくなった財布をしまって、少し涼しくなった夜の空気を浴びた。
「じゃあ、うしろのりな。」
「大丈夫か、飲酒運転のくせに。」
「へいき、コーヒーで醒めたよ。」
そういうと恵が後ろに乗って、肩にもたれかかってくる。
「うれしかったんだよ、すごく。」耳元でささやく。
私は、思い切って告白、というものをしてしまった後だったので、落ち着いていることができた。
「そう。月曜日が楽しみになってきたよ。」
いつものように鼻歌を歌いながら、恵は夜風に茶色の髪をなびかせていた。新大塚を抜けて、池袋方面に自転車を走らせる。私も恵の鼻歌に合わせて、歌っていた。
「なあ、いんなみ、今日言ったこともう一回行ってよ。」
「いいよ、よく聞いてろよ。」私はそういって「私はぁー、恵がぁー大好きですぅー!」走りながら、車の音にかき消されないように大きな声で言った。
「バカ、恥ずかしいじゃない、もうほんとにバカなんだから。」恵が頭をたたく。
「聞こえやしないって、めぐは聞こえた?聞こえなかったらもう一回・・」
「やめなさいよ、もう。」また後頭部を叩く恵。
そんなことをしながら、恵の家の近くに着いたので、
「じゃ、またな。月曜に。」
「おう、またな、なんか考えとくからな。」と恵。
「どうやって断るか、をか?」ふと不安になって聞き返した。考える時間、なんて恵からは想像のつかない台詞だった。
「ま、それも含めて考えとくよ、期待しすぎて事故るなよ。」別れ際にそういって私は赤羽の自宅を目指して明治通りを走っていた。大きな期待と、一抹の不安を胸に自転車をこいだ。途中、中仙道を曲がって自宅を目指す・・・