白いコーヒーカップ その25

月曜日の朝、その日は午前11時に目が覚めた。
「しまった!」と生まれて初めて声に出して叫んだ。その声を聞いて、母親が、
「なんかあったの?」とのんきに聞いてくる。
「何で起こしてくれなかったんだよ、ほんとに。」
「だっていつも起こしてもまた寝るでしょ。学校だってサボってばかりだし。」
反論の根拠もないので私はとにかく急いで服を着替えた。
「ご飯はいらないの?」
「いい、中大で食べる。」私はそういい残してヘルメットをつかんで駆け出した。急いでγにキーを差し込み、キックを何回か下ろす。エンジンがかからない。
焦っていた私はそれでも何度もキックをしてみたのだがかからない。どうしようか、と思っていると、キルスイッチがOffになっていることに気づいた。キルスイッチをOnnにして、思い切りキックを下ろし、アクセルをあおる。
「ぶぅわーん!!」豪快な音を立ててエンジンが目覚める。
私はすぐにアクセルを開けて、無理矢理エンジンを温める。そして、中仙道をこれでもか、とばかりに車の間をすり抜けながら飛ばした。スピードメーターの針は95キロを指している。風で涙が止まらなかったが、すぐに明治通りに入った。飛ばしに飛ばして、春日通に。たったの15分で学校まで到着してしまった。私は校門の脇にバイクを止めて、階段を駆け上がった。4時間目の半ばから出てきた私に
「何しに来たんだ、今頃!」と英語の教師が怒鳴りつける。ちぇ、こいつは間違いばかり教えてるくせに、と思いながら私は返事をする
「メシを食いに来ました。」
教師は黙り込み、何もなかったのように授業を続けた。私が席に座ると、後ろのドアのほうから大きな紙を丸めたのが飛んできて私の後頭部に当たった。恵だな、と思って紙を開くと、ものすごく大きな字で「ばーか」と書いてあった。

<つづく>