濃緑の季節 その11

予定表を作り終えると、私は予定通り基礎解析の問題集から手をつけ始めた。想定どおり、ほぼ完璧に理解していたのですぐに終わって、ケアレスミスを除けばほぼ満点に近い。私は壁のスケジュール表に「ケアレスミスに注意、見直しをすること」と書き込む。次に代数幾何の参考書を開いた。理解の浅い点を中心に基礎からやり直すこと2時間、ほぼ理解できたところで問題集を解く。こちらもほぼ満点に近い成績を残すことができた。まぁ、勉強直後の問題集だから当たり前だ。こちらは予定表に「前日に再テスト、弱点を補強」と書き込んだ。一気に4時間続けて数学の勉強をしたところでギブアップ。時間も夕食の時間になっていたので、今日はここで終わりにしよう、と思ってテキストを閉じる。リビングに出ると、母が言った。
「ずいぶん真剣に勉強してたじゃない、声もかけられなかったわよ。」
「うん、数学を今日で終わらせようと思ったからね、お風呂上りにもう一度代数のチェックをして、今日は終わりにする。」私は答えた。
その言葉どおり、さっとシャワーでお風呂を済ませると、私はさっきの問題集をもう一度解き始めた。やはり、時間がたって忘れていた点があったので、そこを参考書でもう一度勉強しなおす。そして、練習問題を解いて、今日は終わりにすることにした。
「恵、見てろよ、待ってろよ、恵に勝ったら、おれ、お前に言うことがあるんだ。」そういって、私はリビングに戻って、父が飲んでいたビール瓶を取って、自分のグラスに一杯注ぐ。それを一息に飲み干して言った。
「あー、疲れた。こんなに勉強で疲れたのは初めてだ。」
「なんだ、受験勉強を始めたのか?」
「いや、それはまだ先。宇宙とか好きだから、宇宙論の勉強をしたいからそれなりに勉強をするよ。」
「じゃあ、ホーキングみたいにがんばれ。」父が言う。
「ま、あの人は天才だから・・東大の佐藤教授の研究室とかにいけたらいいな、と思ってるんだ。」
「それで、今年の夏は海でバイトか?大丈夫なのか?」
「まぁ1年あれば何とかなるでしょ、3年になったら勉強するよ。」
グラスをキッチンにもって行って水で流した。そしてそのグラスに牛乳を注いでこれも一気に飲み干す。
その日の夜は頭が心地よく疲れていたせいか、すぐに眠ることができた。