忘れられない夏 その7

その翌日から、私たちは仕事始めだ。恵が貸し出しの手続きをし、私がボートを運んだり、引き上げたりする。ずいぶん不公平なものだ。2日目にもなると、二人とも体が真っ赤に日焼けする。
「風呂はいるとひりひりするんだよな、日差し、強烈過ぎるよ。」
「私も。すごいでしょ、見てよこの腕。」恵が腕を差し出す。表面の皮膚がぼろぼろになって、赤くなっている。
「これでも一応、日焼け止め塗ってるのよ、私。」
「いやぁ、あの日差しの下に一日いたら無理でしょ。」
私は答えた。まるでオーブンの中にいるように、直射日光と、砂浜の照り返しで上下両方から焼かれている気分だった。
「タンドリーチキンになっちまうよ。」そういいながら恵が傘の下に逃げ込んでくる。
「じゃ、しばらく休んでていいよ、その間、おれがやってるから。」私はそういって、立ち上がろうとする恵の肩を抑えて座らせた。本当は私も肌が痛くてたまらず、さらに目が痛くて仕方なかった。サングラスを持ってこなかったのを後悔した。