時を越えて

そのきらめく光の塊は、ものすごい速さで私の目の前を飛び去っていった。私が立つここは4次元の空間。時と空間が同じ意味を持つ世界。

その光は、時間軸から30度ほど空間軸方向に傾いて飛翔していった。

その光に魅せられた私は後を追いかけようと、時空航行スクーターにのってまず時間軸方向へ全速力で駆け上っていった。

時間軸方向へ駆け上る最中に、左右、いや空間軸方向を見るといろいろな景色が一瞬で飛び去っていく。先日、リニアモーターカーで時速650キロ、窓の外を見たときを思い出す。

その光の塊は、時間軸のある部分で止まっていた。そして私はそこまで時間軸を駆け上り、光を目指そうとした、そのとき・・・光の塊がまるで意思でもあるように止まっている理由がわかった。

その先は凄惨な死の世界であった。大勢の人たちのたましいが空に立ち上っていくのが見えた。私は、元の時間に戻ってこれを訴えても意味がないことがとても残念に思えた。

後に第4次世界大戦と呼ばれる時、そこであの光の塊は進むのをやめてしまった。

私は考える。あそこで光の塊が止まっていた理由を、その先に進まなかった理由を。

世界の人たちがもう少しルーズになって、心に余裕を持って、やさしさと愛情を持てば・・・多分大きな変化ができるのだと思う。今の世の中には、必要にして存在する無駄、というものが排除されている。

そこで、この本を閉じた私。人は進化しすぎたんだよな。高次の脳機能を身につけすぎてしまったような気がしてならない。