ある精神科医の手帳
ケース2
Tさん 10歳 女性 小学生
現在登校拒否中
君は、「低学年のときは学校は楽しかった」と言っていましたね。私がいつからつまらなくなったのかと訊いた時、「4年生になってクラス替えがあってから」と言っていましたね。でも、本当にそれがきっかけなのでしょうか、私には疑問です。君が4年生になったころ、算数が難しくなって、毎日家に帰ると母親に勉強を強いられていたとも聞きました。小学校中学年からは算数は難しくなりますからね。それまでは楽々出来ていたものが急に出来なくなってしまった、ということは精神的にダメージが大きいのです。なにせ、今は円周率を3と教える時代ですからね。私が子供のころは円周率は約3.1416と教わったものです。そんな「ゆとり教育」のせいで塾に通う子供と学校の勉強だけをやっている子供に学力の格差が出来てしまうのでしょう。私としてはそういう基礎教育を小学生のうちからきちっと教えていくことが必要だと思いますよ。塾に通わなくても、学校の勉強は基礎の基礎として、独自に勉強をするべきだと思いますよ。そうすれば引け目を感じることなくなるでしょう。なに、私だって受験勉強は自分でやったものです。大変でしたが、自信に繋がりましたよ。
あと、お母さん。見放したようなことを言うのは駄目ですよ。患者さんの身になって、あなた自身が常に手本になっていることをお忘れなく。勉強も教えてあげてください。
なに、まだまだ先は長いのです。今の段階で決まっていることなど何もありません。あなたの世界は広いのです。