ある精神科医の手帳

ケース4

Tさん 36歳 主婦

診断名:うつ病

「何もかも楽しくなく、家事も何もやる気が出ない」と訴えてあなたは私のクリニックにいらっしゃいましたね。さて、楽しくない、というのはなぜでしょう。普段、あなたはどのような人と、どのような会話をしていますか?と私が尋ねましたね。そうしたら「主婦たちで集まって、見得の張り合いや社会に対する不満などを話している」と仰いました。たぶん、それは間違いないでしょう。今の日本には、共通して語るべき話題など無いのですから。それぞれが個を主張し、個人個人で異なった社会認識をし、そしてその上には大きな閉塞感がのしかかっています。たとえば、年金はどうでしょう。あてに出来ると思いますか?頭でっかちな人口分布になって、どうやって制度を維持しますか?これは一つの例えですが、あなたはご自宅におられる時間が長いがゆえに、社会の閉塞、危機感をより敏感に受け止めているのではないでしょうか。日本は長続きしません。私もそう思っています。私のような年寄りの世代ではあまり考えなくても良いのですが、あなたはこれからの長い時代を過ごして行かなければならない。あなたは能天気な性格ではないから、いろいろな不満、不安を感じているのでしょう。しかし、私たち市民が考えていても社会は動きません。今の時代にこそ、大胆な改革が必要です。こういったことを政治家の人たちはしっかりと認識していただきたいものです。

処方:ノリトレン10mg、コントミン25mgを夕食後