ある精神科医の手帳

ケース6

Gさん 21歳 女性 無職

診断名:社会不安障害

あなたははじめクリニックに来る事さえ出来ませんでしたね。なんとかタクシーを使ってこられるようになったのは進展だと思います。そのときは話をすることも儘ならず、紙に手書きで症状を書いたものを私に渡してずっと下を見ていましたね。私はそういう患者さんを見慣れていますから、そこまでできたあなたは良くやった、と思いましたよ。
人ごみが怖い、新しい人と接するのが怖い、人の前で話が出来ないという症状は、最近になってとても増えてきた症状なのです。中にはクリニックまで来られずに、手紙を託してお薬をもらいに来る親御さんたちもいます。あなたはクリニックまで来られるようになっただけだいぶ回復していると思ってください。。こういう風にしましょう、まずはお薬を出しますから、それを2〜3週間飲んでみてください。そうしたら、次に人と接する実験をしましょう。大勢の人がいる街中、お店の店員と話してみる、お薬は多分効くでしょうから、だんだんと楽になるはずです。そして、もう平気だと思ったら、お薬を減らしていきましょう。
こんな心の病も現代病なのですかね、核家族、隣の人も知らないマンションなど、またインターネットやテレビのような受動的なメディア。そもそもコミュニケーションというのは、双方が自分の思うところを話し合うことですよね。でも今はそれが希薄化している。20年前なら、ちょっとした買い物をするにもコミュニケーションが必要でした。新しいものがすべてよい物とは限らないのですね。
あなたには、薬物療法と、認知療法をお勧めします。すこし自信がついたら積極的に外に出ましょう。

処方:パキシル20mg夕食後、レキソタン2mg毎食後