ある精神科医の手帳

ケース7

Sさん 18歳 大学生

診断名:無気力症候群

あなたは今の大学に入るために、高校1年から受験勉強をしていたと仰ってましたね。そして見事に合格。1年生からの努力が実ったわけです。でも、合格した後に虚無感に駆られている。これはとてもたくさんある例で「スチューデント アパシー」というものですよ。入学したとたん今までのような強い牽引力がなくなってしまい、無気力になってしまうのです。頑張る目的がなくなるのです。でも、どうですか?大学の授業は。私は受験勉強よりもその後の勉強のほうが大変でしたよ。あなたも理系ですから、暇などないと思いますよ。もうすぐ前期の試験ですよね、とても難しいですから覚悟してください。
大学はモラトリアムではない、ということを実感するでしょう。また実験のレポートなど徹夜はざらです。おっと、あまりこういうことを言うと学校が怖くなってしまいますからやめておきましょう。あなたには課題がたくさん残されています。授業、毎回の試験、レポート、卒業研究。そしてそれを終えても就職してからはさらに多くの課題にぶつかるでしょう。お説教をしたところですぐに変わるか、ということもないので、お薬を出しておきます。お薬を飲むことと、大学受験なんかただのスタートラインだと認識することです。人生を終えるときに、初めて自分の評価が下されるのです。

処方:ノリトレン10mg、トフラニール10mg毎食後