断片5?

翌日、私は寝不足のままバイクで家を出て行き、電磁気学と回路理論の授業をうける。頭がぼんやりとして、難解な数式が眠気に拍車をかける。
「おい、学食行こうぜ。」
不意に声をかけられ、あわてて周りを見回すと、同じコースの一山が私の横に立っていた。どうやら私はすっかり眠ってしまったらしい。
「やば、回路寝飛ばした、ノートコピーさせてくれ、頼む。」
私ははっとして、一山に頼み込んだ。この授業は学科の中でも有名で、半数以上の学生が落第する。さらに必修科目なので、落としてしまうと卒業できない。前期は授業を必死に聞いて、復習をして、さらに試験前に必死に勉強してなんとか「優」の成績を取った。その成績はクラスの中で私と一山だけであった。
「昼飯何おごってくれる?」
そんな「取り引き」をすることもあった。勉強していてどうしてもわからないところを夜中に電話で教えあったりすることも頻繁だった。大体いつもよい成績を取る数人の中で、徹夜でレポートを仕上げたり、難しいところを聞いたり聞かれたり、小さな助け合いをしていた。けしからんのは、そうやってなんとか仕上げたレポートなどがいつの間にかコピーされて、そのコピー、またそのコピーが出回っていることだった。その後研究室に入ることになって、下級生が自分の作ったレポートを書き写していることも多々あった。
「じゃあ、カフェテリアでチキンカツ。」
私はそういってとてもカフェテリアなどと呼ぶにふさわしくない、地下の大食堂に下りていった。ざわざわとしたテーブルの一つに腰掛けてチキンカツを食べる。チキンカツはとにかく大きくて、衣がカリカリとしているのが特徴だった。