ネタがないので雑文の断片その9

「じゃあ、今度ヘルメットもうひとつ持ってくるからお台場でも行こうか。レインボーブリッジ渡って。あの辺の夜景は綺麗だよ。」
さてどう返してくるか、私は恭子のほうを横目で見ながらバイクを押し続けた。
メディアージュ、行きたい・・」
恭子が小さい声で返事をする。
「そ・・う。じゃあ、こんど行こうね。」
回答を準備していなかったので、ややしどろもどろになりながら私は答えた。私は軽くため息をついて、話を切り替えた。
「お台場だけじゃなくて、東京湾岸にはいいところがたくさんあるんだよ、高校生のころよくバイクで遊びに行ったよ。もちろん今とは全然違う風景だったけどね、潮風が気持ちいいよ。今のお台場は、ビーチになってるし、いろんなお店もあるから楽しめると思う。」
私が言うと、恭子はむくれた顔で言った
「田舎町から出てきた私にはさっぱりわかりません。」
「いや、そうじゃなくて・・」
「だから、今度いろいろ案内してね。でもずいぶん詳しいじゃない?誰と行ったの?」
恭子がからかうような目つきで私をにらむ。
「いや、田原と結構行ったよ。あいつもバイク持ってるし・・」
私は弁解がましく言った。
「じゃあ、再来週の日曜、ね。来週はちょっと予定があるから。田町まで来て。」
都合のいいことを言うな、と私は思った。恭子は続けた。
「田原君は今回はお休みね。」
私は大きく頷いた。あと冴島にはまだ言わないでおいてほしいと付け加えた。冴島が知ったら私がどんなにからかわれるかわかったものではない。約束を確かめて、手帳に書き込んだ。恭子はレポート用紙を一枚破って書き込んだ。
「バイクは寒いから、上着とマフラーはあったほうがいいよ、あとスカートは危ないからやめてね。」
そういって私たちは別れた。その日自宅に帰ってしばらくすると、恭子からメールが来た。携帯電話を開いてみると、「楽しいときが過ごせました。またね。」と簡単なメッセージが届いていた。私は「こちらこそです、ではお休み。」と書いて送信した。なんとなくわくわくしていて、なかなか寝付けなかった。