深夜のマリンブルー

「・・・・ちゃん?」
「ようちゃん、ねぇ、ようちゃん?」


最近になってやっと聞き慣れてきた声が水の中を伝わるように聞こえてくる。やっとの事で目を開けて、ベッドサイドのランプをつける。
私の上に覆いかぶさるようにして、私の目をのぞき込んでいる麻子の目と、静脈が透けて見えるような白い素肌が浮かび上がる。

「ん、おはよう、今何時だっけ?」

私はベッドの近くに目覚まし代わりにおいてあるCDクロックを見る。1時23分。

「あ・・・寝ちゃったのか・・」
まだ霧がかかったような頭の中から何とか返事をする。だんだんと目が慣れてきて、寝室を見回した。

「ううん、いいの。疲れてたんでしょ?あのあとようちゃん、すぐに寝ちゃったよ。気持ちよさそうにね。」
麻子は目を細めてほほえみながら私の目を見ている。
「ごめん、ちょっと昨日から寝てなかったからさ・・」
「いいよ。ずーっと寝顔を見てた。それだけじゃないけどね。ようちゃんの睫毛、長くてきれいにカールしてて、ちょっと憎たらしくなっちゃったよ。抜いてやろうかと思った。冗談だけどね」
いたずらっぽい表情を浮かべる麻子のうなじに手を回して引き寄せる。麻子は目を閉じて私の首に顔をうずめる・・
羽毛布団を引っ張り上げて、麻子の肩にかぶせる。しばらくすると、麻子の手のひらの、唇のやさしい感触を感じた。吐息を聞きながら、私はうなじに回した手で麻子を引き寄せた。髪を撫でると、しっとりとした湿り気を感じた。同時に、さわやかなコンディショナーの香りが立ち上る。

「そろそろ寝ないとね、明日もお仕事だからね」
麻子は私にいって、背中に回していた手をほどいた。しばらくすると右側から麻子の静かな寝息が聞こえてくる。私は頬に軽くキスをして、また羽毛布団を引っ張り上げた・・・・