愛の言霊

「私はあなたのことが大好きです、人間としても、一人の男性としても。」
そう締めくくったあなたの手紙。便箋2枚にきっちりと収まって、文章も普段のあなたとの会話よりもずいぶん大人びた感じでしたね。


でも、あなたは誤解していました。
「一つめの質問の答えはYesで、二つめはNo・・」
違うのです。あなたは、私の言葉から悪く考えすぎていました。そんなの、あなたに対する私の態度から、明らかだったじゃありませんか?

あなたは言いました、「この手紙は、家に帰るまで絶対に開かないで」と。
私はその通り、家に着くなり、手紙を読み始めました。
違うよ、思い違いだよ・・・

車のアクセルを踏みながら、あなたに電話しましたね、
「電話だと言い尽くせないし、誤解があるかもしれないから、今から話しに行く」
って。制限速度を大きく超えて、高速道路を埼玉から東京へ・・・・
東京のあなたのところへ・・・


明け方になって、長い睫毛を涙に濡らして、やっとあなたは納得してくれましたね。
「ごめん、誤解を生じるようなことを言って・・・」
明け方、紫の空の下で、あなたの小さな手が、私の大きい体をつかんだ力の強さ。そこから伝わる言葉のいらないメッセージ・・・

私は感激していたのです。
言葉にはしませんでしたが、私の大きい手から、あなたの、ほとんど私の手のひら一つとちょっとくらいの細い体に、メッセージは伝わりましたか?
あなたの頬を、両手で軽くささえて、少しかがんで・・・

そのとき、あなたは大粒の涙を子供のように流していましたね・・・
アイラインが流れて、顔に模様を描いていましたね・・

そして、言葉にならない嗚咽・・・・二人とも・・・・


やめましょう、こんなことは単なるセンチメンタリズム・・
未来に向かって歩く私たちには、不要のもの・・


でも、とても大切に、あなたの手紙はとってありますよ、きちんと。
私は、そういうものを捨てられない、そういうものを、とても大事に思う人間ですから・・・