愛の言霊 その2

「あの・・彼女って・・いますよね?・・」

さっきまで伏し目がちで、あまり話題に加わらなかった君、私より8歳も年下の君、きっと意を決して言った言葉のはずだ。
私は逡巡した。嘘はつけない、でも傷つけたくない、でも嘘をつけば余計に傷つけることになる・・・
そう思ったから、私は言った。
「うん・・いるんだ。違う大学だけど、同級生。」
君は明らかに、むりやり作った笑顔を私に向けてくれた。その笑顔が私には辛かった。
「そっか、そうですよねぇ〜」
おちゃらけた言葉だったけど、その後の飲み会が終わるまで私には普段のほのぼのとした笑顔を向けることはありませんでした。私も作ったようなフォローはしませんでした。
それが余計に君を傷つけることを、知っていたから。


その子は私のバイト先で知り合った子だった。
「小説を書いているんですけど、見てもらえませんか?」
とか、よく朗らかな顔で話しかけてくれる、話していて心の落ち着く子だった。


その次に私がバイトに行った日、君は変わらない笑顔を私に向けてくれました。まだ18歳、どういう気持ちで私に接したのか・・それでも私はすこし、気持ちが楽になった。


「じゃあ、私は上がりまーす」そういって君は5時で帰っていきました。私は6時に上がるスケジュールでした。1時間後、私は家に帰ろうと私のバイクに向かって歩いて・・私は歩みをとめた。君は私のバイクの上で、何か書いているようでした。
君がいなくなるのを待って、私はバイクに向かった。
タンデムシートのベルトの部分に2枚のメモが挟んであった。


「安全運転で帰ってよ、事故ったら許さないからね、道凍ってるから気をつけて!」
「警察を呼んで〜、この人どろぼうだから!!(笑)」
そして、2枚目のメモにはペン先が突き破った跡が残っていました。

・・・そんなメッセージを、机の引き出しに戻して、引き出しを閉じた。
ゆっくり安全運転で、遠路を帰りましたよ。