愛の言霊 その3

あなたは、少し体を反らしてふるえたあと、私の両肩を引き寄せてささやいた。
「大好き・・・」
あなたから、その類の言葉を聞いたのはそのときが初めてだった。お互い深入りしない、という暗黙のコンセンサスがあった。
私が両手に力を入れて背中を引き寄せると、あなたはまた目を細める。私の背中に爪が食い込むのが分かる・・・
上気した顔であなたは繰り返す。
「大好きだからね、大好きだよ・・」
私は、あなたの言葉の客体が何であるか、しばらく戸惑っていたのです。

あなたの顔が近づいてくる。私は目を細めて待ちかまえる・・

でも、あなたがくっつけたのは、あなたの頬と、私の頬。
頬を通して温もりが伝わる。同時に気持ちが伝わる・・



後頭部を手のひらで覆って、あなたをゆっくりと引き寄せた。

「好きだよ・・」

しばらくして、私も初めてあなたにその気持ちを伝えた。
でも、そのときあなたはぐっすりと寝息を立てていましたね。
「あーあ。」
結構がんばって言ったのに。ふう。