夢がなくなる。


職場復帰して、現実社会に身をおいていると想像力、というか夢みたいなものがなくなっていることに気づく。ここに書くことも本当にただの日記で面白くもなんともない。
現実的になればなるほど、何かを思う心が痩せていくのが人として寂しい。評論とかならかけるけれど、それは目的に合わない。


ものすごく忙しくて、欝で寝込む直前のころ。もちろん事故よりは前の時期のこと。


好きな音楽でさえうるさかった。
赤ん坊の相手をしてもつまらなかった。
会話もわずらわしかった。
涙することがなかった。
本なんて読む気にもならなかった。
漫画ですら面倒だった。
愛の言葉など口にするのも無駄に感じた。やさしさが消えた。
安らかに時間をすごすことなんてできず、絶えず考えていた。
美しい景色を見ても何も感じなかった。


会話から形容詞、比喩がほとんどなくなった。
そんな私と暮らしていた元の妻はさぞつまらなかったに違いない。


心の栄養が枯渇していたのだ。
そして消極的自殺のようなスリルに逃げた。麻薬に逃げるのと同じだ。生身をむき出しにして、時速200キロ以上の速度で車の波を縫って走っている時だけ「生きている」という実感に浸れた。死をすぐ隣に感じてやっと。



今はさほど忙しくないからそうではないけれど、心の潤いがいくぶん減っているように思える。
飽きるほどの自由な時間があって、やっと何かを思索することができるのかな。
休日にスケートで滑っていると楽しいし、自然と頭の中でスケーターズワルツが聴こえる今は心が健康な証拠だ。もう一声欲しいところだけどね。
思索の時間を持ちたいな。


もし次に心が枯渇したら、今度は時速300キロ以上の世界にスリルを求めだすのかもしれない。
家の前にそれを簡単に実現できる機械があるし。