大きな木の下で

帰宅の道での突然の雷鳴と瞬時に降りだした大粒の雨。

私は近くの木の下に雨宿りをする。そのとき鞄を頭の上に掲げて走りこんできた君がいた。彼女は部活のタオルで鞄と頭、水浸しになった全身を拭いて私の方にそのタオルを差し出した

「これでふきなよ」
「あ、ありがとう・・」私はタオルをぎゅーっと絞って水浸しになった制服や鞄を拭いた。
「ありがと」「じゃ、貸して」
「いや洗って返すよ・・」
「また途中で使うかもしれないでしょ、この天気じゃ。」
雨はひとしきり降り続けたあとにぴかぴかの青空になった。
「じゃ、ここで」
「うん、バイバイ」
その日を境に、夏日が多くなって熱くなっていった。
たわいも無いひと時に、ちょっと胸が熱くなった中学生の私。
(なんとなく覚えている記憶帳4096ページより)