濃緑の季節 その7

なんか、恵と同じようなことをしていたのがわかって可笑しかった。
「おれたち、いつも寝てるからな。そりゃ嫌気もさすでしょ。」
そんなことを話していると、サラダとスープが運ばれてきた。ランチなので、どちらも控えめな量だ。店内ではボサノヴァがかかっていた。初夏の陽気にボサノヴァのリズムがマッチしていた。
「あ、この曲知ってる、Desafinadoだよね。」恵が言う。
私はその曲を知らなかったが、軽快なリズムときれいなメロディーラインを頭の中で追っていた。
「めぐ、このCD持ってるの?貸してくれない?」
「いいよ、じゃ明日持ってくるよ。そのほかにも自分の好きな曲をまとめたCDをパソコンで作ったんだ、それ持ってくるね。」
「あ、それすごくうれしい。めぐ、センスいいからな。」
アントニオ・カルロス・ジョビンが好きなんだ、ほんとは。」恵が続けた。
「そういえば、あんたもクラシックの曲をまとめて目覚ましCD作ったって言ってたじゃん。どういうやつなの?」
「いや、バロックを中心にして、さわやかな曲をまとめたんだ。お約束だけど、Peer Gyntの『朝』も入ってるよ。」音楽の話になると二人とも時を忘れて話し出す。私も恵も、ロックを集めたCDやPopsばかり集めたCDを作って楽しんでいた。通学のときに便利なのだ。そんな話しをしながら、サラダとミネストローネを楽しんでいた。お皿が空になると、今度はパスタが運ばれてくる。
「あ、めぐのおいしそうじゃん。」
「少し食べてみな。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。めぐもどうぞ」私は自分のカルボナーラを差し出した。
「それじゃ、一口もらうね」といって、がばっともって行く恵。久々に恵らしさを感じてなんとなく安心した。