夢七夜

第四夜


原点の萌芽。


「ん、ここはどこだろう」
「そこにいるのは、誰?」

「わかんない、でもおまえとおんなじだよ・・?」
「おんなじだね、何でだろうね?」


零点振動から生まれたかどうかわからないが、ともかく僕たちは、無いところからでてきた。ふたり一緒に、初春の土手に芽生える双葉のように。
それから、いつもいつも会話を楽しんでいた。なにせ、鏡に映したようにおんなじことを考えていたりするから、とんとん拍子に会話は進んだ。


「なぁ、おまえ、ちょっと大きくなったんじゃないの?」
「そうかなぁ・・ま、結局同じになるんでしょ。」
「だといいけどね。」


ときおり響くように、わけのわからない音が聞こえる。何を言っているのかはわからないけれど、会話を邪魔されてうるさいなぁ、と思ったから、二人して周りの壁をけっ飛ばしたりしていた。


「どう?最近蹴りがきまってきたと思わない?」
「うん、しっかし、最近ここ狭くなってきたよね?」
「もっとけっ飛ばせば広くなるかもしれないよ。」
「そうだね、がんばってけっ飛ばそう!」

ドカドカドカドカ。

21世紀の初めての秋、僕たちは空気というものを吸った。隣には、今までそばにいたやつがいた。でも、しばらくするとお互いの言葉が遠くなってきた・・・


「なんか、お話がしづらくなってきたね?」
「そうだね。だんだんぼんやりしてきた・・・」
「また、そのうちお話ししようね。」
「うん、じゃあ、また今度。」
「こっちは広くて楽しければいいね。」
「たぶん、そうだよ。だってさ・・・・」


それを最後に僕たちの会話は一度終わった。顔を見合わせると、長い睫毛を涙に濡らして泣いているお互いが見えた。周りにおんなじようなぶよぶよしたのがたくさんいたけれど、僕たちはひときわ小さかった。でも声の大きさは人一倍だったかな。


僕たちは、くしゃくしゃの顔で微笑み合った。大きな黒目と長い睫毛が印象的だった。