雑文書き散らし
緑が濃い季節がやってきた。木漏れ日が教室に力強く差し込む。冷房のない教室は、2時間目の初めにはすでに蒸し暑くなってくる。私は珍しく朝から登校して、退屈な授業を聞いていた。寝ようと思ってもどうも眠れなかった。恵の気持ちを確認した後も、あまり普…
家に帰り着くまで、よく事故を起こさなかったものだ。ずっとぼんやりと、上の空で1時間くらいかけて自宅に到着した。ドアを開けるなり母親が聞く。 「出て行ったと思ったらすぐ帰ってくるのね、なんかあったの?」 「うん、すごくいいことがあった。」思い…
またボールペンで後頭部を叩かれて目を覚ますと、恵の顔が目の前にあった。 「おい、いつまで寝てるつもりだよ、ったく少しは人の身になれよ。」恵が言う。 時計を見ると、すでに午後3時、私の教室にいるのは、私と恵だけだった。 「あ、つい子守唄みたいに…
に、彩られる季節がもうすぐ・・・待ち遠しい・・
4時間目はまもなく終わり、私は隣の部屋の恵の席に行って、 「ごめん、遅れる気は無かったんだ。」と謝った。 「いいからメシでも行こうぜ、どうせそのために来たんだろ、メシ食いに。」 「じゃあ、中大、でいいよな。」 「乗せてってね。」 「いや、今日バ…
月曜日の朝、その日は午前11時に目が覚めた。 「しまった!」と生まれて初めて声に出して叫んだ。その声を聞いて、母親が、 「なんかあったの?」とのんきに聞いてくる。 「何で起こしてくれなかったんだよ、ほんとに。」 「だっていつも起こしてもまた寝る…
私は自宅について、恐る恐るドアを開ける。 「あんた、また遅いじゃないの。・・酔ってる?」目ざとく母親が問い詰めてくる。 「ちょっと、飲んで来たんだ。」 「あの子と、でしょうね?」 「・・・そう、だよ。」 「別の子とだったらひっぱたくところよ、で…
私は支払いを済ませて少し涼しくなった財布をしまって、少し涼しくなった夜の空気を浴びた。 「じゃあ、うしろのりな。」 「大丈夫か、飲酒運転のくせに。」 「へいき、コーヒーで醒めたよ。」 そういうと恵が後ろに乗って、肩にもたれかかってくる。 「うれ…
注文を告げてしばらくすると、タルトと白いコーヒーカップが運ばれてきた。私は熱いコーヒーをブラックで、恵はミルクだけを入れて飲みながら、タルトを食べていた。 「めぐ、これ半分あげるよ。」私は自分のタルトを半分に切って、恵に言った。 「じゃ、遠…
★例のシリーズの元ねたはこの小話だったりします。朝は雲ひとつない晴天だったが、午後になって日が翳り始め、それからは一気に土砂降りの雨になった。「傘は?」下駄箱で、靴を履いていたときだった。 ふと振り返ると傘を手首に引っ掛けて、ぐるぐる回して…
「あーおいしかったね。」恵が言う。 「だね。でももうちょっと食べたかったな。」 「まだあるでしょ、お皿。」 「そのはずだけど・・・」 ウェイトレスが私たちのテーブルからラザニアのお皿を下げていった。 「乾杯・・しよ。」 「・・・うん。」恵もなん…
いつもの憎たらしい恵が戻ってきたところで、ワインの残りを二つのグラスに注いだ。ブルゴーニュグラスの半分くらいだった。 「やっと、いつものめぐになったね、いい顔してるよ。」私もほっとしてそう言った。 「バカ、恥ずかしいじゃない・・やっと私に惚…
なんか、冗長な文章な気がする・・・続編として「濃緑の季節」「忘れられない夏」「秋の夕暮れに」「春の息吹」があるんですけど、打ち切ろうかな・・・原稿用紙200枚分くらいあるし。
しばらく、目の前のサラダを食べていた。有線放送は、ピアノとベースが絡むジャズを奏でていた。 「・・・あんた、しっかりしてるよね・・うらやましいよ。」唐突に恵が言う。 「えっ?」 「いや、さ。わたしなんか惰性で生きてるような気がしてさ・・なんか…
「とりあえず、乾杯しようよ。」恵が言った。 「そうだな。じゃあ、えーと・・・何かに乾杯!」 私と恵はグラスを合わせて、ボージョレを飲んだ。酸味が利いたフルボディのワインは初めてだったが、のみやすくておいしかった。 「おいしいな、これ。お前知っ…
金曜日の夜、お店はがやがやと混みあっていたが、二人分の席は確保できた。私は少々こわばりながらも、店員を呼んで、ディナーのコースを二人分とボージョレ1本、グラス二つを注文した。身の丈にあっていると思ったのだが、いざ来てみると緊張した。そんな私…
・・・・・ 「でさ、Queenのベスト盤が気に入っちゃってさ、毎日通学のときにCD聴いてるんだ。」 「Queenは私はわかりませーん。」恵は、そうは言いながらも楽しそうに音楽の話に付き合ってくれている。私も、恵もほぼノンジャンルで音楽を聴いていて、好き…
帰宅の道での突然の雷鳴と瞬時に降りだした大粒の雨。私は近くの木の下に雨宿りをする。そのとき鞄を頭の上に掲げて走りこんできた君がいた。彼女は部活のタオルで鞄と頭、水浸しになった全身を拭いて私の方にそのタオルを差し出した「これでふきなよ」 「あ…
中央大学の学食から帰って、5,6時間目の授業を寝てすごす。すやすやと寝ている私の後頭部をボールペンでひっぱたかれて、目が覚めた。もう、授業は終わっていて、生徒たちは帰ったり、部活に行ったり、教室に残っているのはわずかだった。 そして、後ろを…
翌日は朝から曇り空だった。鉛色の空の下を自転車で、学校へ。窓の外も鉛色に見えて、気持ちにも暗雲がさすようだった。退屈な授業を上の空で聞いていた。休み時間に、隣のクラスに行ってみると、恵がいない。じゃあ、あそこかな、と進路指導室に行くと恵が…
私は恵の住む池袋をあとにして、明治通りをひたすら王子方面に進む。途中、西巣鴨で中仙道に入って、赤羽方面へ。長い距離をチャリンコで走るのは大変だが、今日はなんかうきうきしていた。明日もチャリンコで学校に行こう、と思った。 家に帰り着いたのは、…
ミスタードーナツでは、今日の後楽園の話で盛り上がった。コーヒーのお代りを何度しただろうか。 「じゃん」 私は、リニアゲイルの途中でとった写真を見せた。自動的に撮影して、お金を払うともらえるのだ。 「なんか、私、すごいかおしてるじゃん、やめてよ…
並んでいる列の後ろに私と恵はならんで、学校での話題に花を咲かせていた。階段を上っていくと、ラクーアが見えてくる。 「帰りにラクーアよって行く?」と私は冗談交じりに言って見る 「バカ、何言ってるのよ、もうほんとバカなんだから」恵がほっぺたを膨…
私は虚をつかれてしまった。そういえば、今日の恵はきれいなアイラインを引いて、赤いルージュをさし、まつげもきれいにカールしている。どうせ、恵の好きな絶叫マシンに乗ったら一発で台無しだぜ、とか思いながらも 「そういや、今日のめぐ、ぱっとしてるよ…
3時間目の途中に私は学校に着いた。教室の扉を開けると、皆の視線を浴びた。恵の顔がぱっと明るくなって、ため息をついていた。 「何しに来たんだ、いまごろ」 歴史の教師がいやみたっぷりにきく。 「え、あ〜あの、先生の授業には出たいなと思いまして」適…
家に着くなり母親が「遅いじゃない」と詰問してくる。 「いや、さ、ちょっと映画に・・・」うろたえる私 「・・・ふーん、じゃあこれ以上何も言わないよ」 その日の夜は、恵と後楽園に行ったときのことを考えて、よく眠れなかった。朝になってもよく眠れない…
映画は大どんでん返しを迎えて、しばらく感慨にふけってエンドロールに見入っていた。「なぁ、すごかったな、あいつ」と恵 「おお、久しぶりにこんなの見たよ、ここまでのは初めてだよ」 「じゃ、そろそろ行こうか」と、こんどは私が恵の手を引いて出口に向…
エレベーターで上に上がってみると、ちらほらと並ぶ客がいた。私たちも、通路に座り込んで並ぶことにした。 「ちょっと待ってて」と恵 「ああ、並んでるよ、便所か?」 「アホ、違うよ。しかしお前下品だな」 しばらくすると、恵がでかいコカコーラの紙コッ…
そんなことをしながら、いつもの池袋の街に来た。目的地は、シネマ・サンシャイン。通称「シネシャン」だ。私服姿なので、とくべつ目立つこともない。雑然と下町を、雑多な人々が通り過ぎる。チラシを配る黒人、何をしているんだかわからない10〜20代の若者…
私と恵は、図書館の中を一緒に歩く。理工学部の校舎なので、ちんぷんかんぷんの本ばかりだだらだらと、わかりそうな本がないか探しながら歩いていたが、論文誌や専門書ばかりでさっぱりだ。 「おーい、全然わからねーよ」と恵が呼びかけてくる。 私は手を上…